中国で50~60年代に流行した連環画(子供向けの絵物語)の西遊記の一節「大暴れ孫悟空(原題:大闹天宫、大鬧天宮)」です。日本で有名な三蔵法師と出会う前の孫悟空の天界での大騒動を描いた物語。日本では有名ではありませんが、中国人なら誰でも知っているエピソードです。言葉遣いも平易で、中身も面白く、絵も素晴らしいので大人でも楽しめる内容になっています。無料の西遊記の漫画(マンガ)と思って気楽に読みましょう。
この連環画は我が国の古典文学の名著『西遊記』の中のエピソードである。孫悟空が竜宮と地獄で大暴れすると、東海の竜王と閻王は玉皇大帝に訴えに行った。玉皇大帝は兵を派遣して彼を捕まえさせようとしたが、太白金星という神が策を提案し、孫悟空をだまして官僚にして、懐柔しようとした。孫悟空は騙されたと気づき、反旗を翻し、天宮で大騒ぎした。如意棒を持った孫悟空に敵はなく、天宮の偉い神たちを一掃した。老君仙も孫悟空を焼き殺すことが出来ず、逆に孫悟空は火眼金睛(かがんきんせい。炎を連想させる、金色の虹彩を備えた赤い眼球)を獲得した。結局、玉皇大帝は西天如来仏に助けを求めざるを得なかった。如来仏は特殊な法力を用いず、講和するふりをして孫悟空を捕まえた。孫悟空は捕まると、五行山の下に捉えられ、大変な辛酸をなめた。しかし、彼は今回の失敗で、さらに賢くなり、あわせて火眼金睛も獲得し、どんな妖魔も彼をだますことが出来なくなった。
(1)天上の皇帝は玉皇大帝と言った。この日、玉皇大帝が霊霄宝殿で政治をしていると、東海竜王と地獄の閻王が訴えにやってきた。ふたつの上奏状はともに孫悟空の事であった。
(2)竜王は孫悟空が彼の水晶宮で大暴れをし、海を鎮める宝物である如意棒を無理やり持って行ったと訴えた。
(3)閻王も、孫悟空が陰曹地府で大暴れをし、生死を司る帳簿にある猿の名前を消してしまい、猿の生死が管理できなくなってしまったと訴えた。
(4)玉皇は上奏状を見ると、孫悟空が十分に強く、悩ましいとともに怖いと思い「どの神将がこの悩みを解消し、下界のこの妖猿を取り除いでくれるのだ?」と尋ねた。しかし、誰も反応しなかった。
(5)玉皇は悩んでいると、老臣である太白金星という神が「孫悟空は強いので、兵を派遣しても彼に敵わないかもしれません。彼をだまして天上に来させて、彼を官僚にして、実際には厳しく管理しましょう」と奏上した。玉皇はこれを聞くと喜び、金星を下界に派遣した。
(6)ところで、孫悟空は花果山の水簾洞で王を名乗り、2カ所(東海と地獄)で勝利して、さらに偉そうにしていた。猿たちは生死を司る帳簿から名前が消えたと聞いて、喜んでいた。洞窟の中や外で大喜びして、勝利を祝っていた。
(7)金星は勅命を受けて、急いで水簾洞に向かった。金星が雲から降りると、見張りの猿に見つけられた。猿は急いで孫悟空に報告した。
(8)悟空はこれを聞くと、急いで飛び出してきて「どこから来た大胆なじじいだ!この悟空様の山にやってくるとは。これでもくらえ」と言った。如意棒を取り出すと振りかざして太くした。金星は驚いて後ずさりした。
(9)金星は改めて微笑みながら「猿の王よ、勘違いしないでほしい。私は天上の太白金星で、ずっと猿の王の高名を聞いていた。今日は、玉皇大帝の勅命で、貴方に天に来てもらい官僚になってもらうためにやってきたのだ」と言った。
(10)悟空はこれを聞くと、とても喜んで、急いで如意棒をしまい、笑いながら「ちょうど良い!この数日、私もちょうど天に上りたいと思っていたのだ。良いところにお前がやってきた」と言った。金星は悟空がだまされたのを見ると、さらに慇懃を装った。
(11)悟空は金星を引っ張っていった。洞窟のところに行くと、猿たちに「おまえたちしっかり洞窟を守っているんだぞ。俺は天を見てくるから、もしも良ければ、お前たちもつれていってやるからな」と言い聞かせた。
(12)金星は老人なので、雲を操るのも遅く、孫悟空は我慢できず、筋斗雲を操って直接南天門に向かった。門番の天将たちはこれを遮り「どこから来た猿だ、天宮に押し入るとは」と叫んだ。孫悟空は「金星のじじいのやろう!この孫悟空を呼んでおきながら、邪魔をさせるなんて」と非難した。
(13)金星が着くと、平謝りであった。孫悟空は「もういい!官僚なんて!俺はもう入らない」と怒った。金星は計画がおじゃんになるのを恐れて、彼を引っ張って、南天門を入っていった。
(14)霊霄宝殿につくと、玉皇が座っていた。金星は急いで、成功を奏上した。孫悟空はただ傍らに突っ立っているだけで、礼もしなかった。
(15)玉皇はわざと「竜宮と地獄を騒がせた妖猿孫悟空はどこだ?」と尋ねた。孫悟空は前に出て、一瞥すると大声で「孫悟空はここだ。どうだ?」と叫んだ。
(16)玉皇が怒ろうとしたとき、金星が急いで「陛下どうかお怒りをおさめてください。この孫悟空は荒れ山の山猿で、礼節をわきまえておりません」と言った。孫悟空はこれを聞くと「このじじい、礼節がないなんて、この孫悟空様は花果山で名を轟かせる美猴王だ、荒れ山の野猿だと!」と叫んだ。
(17)玉皇は孫悟空を”弼馬温(馬の飼育係)”の職に命じた。孫悟空は喜んで職につき、天馬をりっぱに育てた。後に、この”弼馬温”が低い身分だと知って、大いに怒り「あのじじいめ、この孫悟空を騙すとは」と怒り、如意棒を取り出して振り回し、南天門に向かった。
(18)孫悟空が花果山の水簾洞にもどると、一角鬼王が会いにやってきた。鬼王は「大王はこのようにすごいので、当然”斉天大聖”となるべきなのに、どうして、馬の飼育係なんて低い身分になったのでしょう」と言った。孫悟空は喜んで「その通りだ。任命してもらう必要なんてない。今日から、自ら斉天大聖を名乗る」というと、旗を立てた。
(19)玉皇は孫悟空が天宮に反乱を起こしたと聞くと、急いで托塔李天王親子を派遣してこれを捕まえようとした。天兵が花果山に着くと、李天王はまず巨霊神に戦いを命じた。巨霊神の身体は数丈で、頭はざるのようで、二つの大斧を使って、威風堂々としていた。しかし孫悟空は「お前はどこの毛神だ!この孫悟空に挑戦するとは」と叫んだ。
(20)巨霊神は斧で切りつけた。孫悟空は如意棒で迎え撃ち、3回も斬り合わないうちに、巨霊神の2つの斧を折ってしまった。巨霊神は残った斧の柄を二つ握って、頭を抱えて逃げていった。
(21)李天王は息子の哪吒を出陣させた。この哪吒は小さい時から鍛えていて、両足で風火二輪(二個の車輪の形をした乗り物。火と風を放ちながら空を飛ぶ)に乗り、6種類の武器を使って戦い、孫悟空に向かって突っ込んだ。孫悟空はこれを見ると、逆に笑って「お前はどこの子供だ?まだ乳歯も生えかわっていないのに、死ににきたのか?」と笑った。
(22)哪吒少年は、笑われてこらえきれず、剣で切りつけて「この妖猿め!私の一撃を食らえ」と罵った。しかし孫悟空はよけずに、首を伸ばして「どうぞ、どうぞ、斬りなさい。動いたら男じゃない」と言った。哪吒は3回斬りつけたが、斬ることができず、手が痛くなるだけであった。
(23)哪吒は三面六臂に変身して、6つの手で6つの武器を使い、一斉に孫悟空に切りつけた。孫悟空も黙っておらず、叫ぶと、三面六臂に変身して、3つの如意棒を使って、哪吒に反撃した。
(24)哪吒は変身して、6つの武器が、よりたくさんになり、火球が地を揺らさんばかりになった。孫悟空も如意棒をたくさんに変化させ、大風が大雪を巻き起こすように、火球に向かわせた。二人とも30回ほどきりあったが、勝敗は決まらなかった。
(25)孫悟空は毛を抜くと、自分に変身させて、哪吒の気をひくと、こっそりと哪吒の背後に回らせ、激しく哪吒を打ち付けた。哪吒は風の音を聞くと、急いで避けようとしたが、左手を打ち付けられた。痛みに耐えて急いで逃げだした。
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