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三国志と企業経営3

更新日:

 

 

現在の企業は市場で自由に争っているとはいえ、独占禁止法や様々な法律により活動を制限されており“勝つためには何をやっても良い”という訳ではない。もっとも、中国ではその兆候はあったりするわけだが、、、(笑) 

 

勝手に分類すると、

  • ①戦略の有用性:現在の企業が競争する市場経済原理で有用な戦略か
  • ②企業の継続性:その戦略は企業の継続性に著しく悪い影響が無いか
  • ③コンプライアンス:その戦略は国際的な法律を遵守できているか
  • ④社会道徳:社会の信用を築くのは難しいが、失うのは一瞬であり、社会道徳に沿っているか

という観点での精査が必要であると考える。以下、この4つのポイントで戦略有用性をチェックしてみる。

 

策略の有用性

  策略       備考
兵は神速を尊ぶ 信息過ぎてリスク対応が不十分な事も(笑)
苦肉の計 偽情報を流すことが情報公開の精神と矛盾
贋書の計 × 偽情報を流すことが情報公開の精神と矛盾
十面埋伏の計  
天下三分の計  
二虎競食の計  
駆虎呑狼の計  
穴を掘って虎を待つ  
離間の計 偽情報を流すことが情報公開の精神と矛盾
美女連環の計 × × × 現代企業経営では使いにくい策略。スパイなら〇
空城の計 × 失敗した場合の企業継続性により実行不可能か

 

このように見てみると現在の企業経営や株式市場における情報公開の透明性や説明責任も考えると、偽情報を使うような策略はなかなか使いにくいのではないかと思う。また、その策略が失敗した場合に企業継続性に大きな疑義が出る戦略は事実上実行不可能であると考えられる。

 


 

私が考えるベストの策略

 

さて、最終的に答えを出す前に、企業が“戦略”と“戦術”を混同し、使い方を間違えるとまず間違いなく悲劇が起こる。よって、最初に戦略と戦術の違いを明確にしておきたい。

 

戦略とは、英語でWhat(目的)であり、何をすればいいのか、何をすれば儲かるのかを考えることからスタートし、企業が進むべき方向や経営の考え方を明らかにするものである。そして、将来の進むべき方向性とシナリオを描き、他社との競争優位をいかに確立するかを考える。戦術とは、英語でHow to(手段)であり、今までのやり方を大きく変えないで、現状の延長線上でやり方や方法を改善すること、例えば、業務を標準化して効率化を図ることなどである。

 

さて、上記のリストを見てみると、コンプライアンスなどに引っかかっていない、兵は神速を尊ぶ、十面埋伏の計、二虎競食の計、駆虎呑狼の計、穴を掘って虎を待つは“戦術”であり、日々の経営でライバル企業に勝つためにどのような戦い方を行うか、という事を示している。もちろん、“神速”は現代中国の起業競争環境の最も大切なファクターなので軽視はしてはいけないわけであるが。

 

 

一方、天下三分の計は、大きな戦略を示しているのではないかと分かる。私は経営戦略部門の責任者をしていた経験から、常々、企業の優劣は“戦術”レベルで決定するものではなく、いかに優れた“戦略”を構築できるかにかかっていると考えている。その意味では、諸葛孔明が示した天下三分の計はまさに三国志の中でベストの策略であると常々考えている。このような大きな構想を示すことができる諸葛孔明は素晴らしいし、その天才を使いこなした劉備もまた素晴らしい経営者であったと考える。

 

 

 

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