最近、中国企業の成長が著しい。ある日、上司がいきなり中国人になった、そんな日が本当に来るかもしれない。今回は、中国式のリーダー像とはどのようなものなのかを、日中に比較で明らかにしたい。
中国式リーダー像に関する調査
人事コンサルティングを手掛けるワトソンワイアット(東京千代田区)が2007年に日本、中国、韓国で実施したリーダー像についての面白い調査がある。日中韓101社の部長職以下を対象に、日本679人、中国2517人、韓国243人からの有効回答を得ている。
国 | 人間性 | 能力 |
日本 | 一貫性、論理、社会的責任、コミュニケーション | 興味深い仕事 楽しい仕事を創出する力 |
中国 | 安心感・公正さ、品格 | 自分にきびしく自分をより成長させる力 |
韓国 | 冷静さ、自信、共感 | 率先的な問題解決力 |
出典:日中韓リーダーシップ調査( http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20080520/157695/)
この調査によると各国でリーダーに求める能力を以下のようにまとめている。
日本では「部下に対してキャリアイメージを伝え、話を聞き取り、問題の本質を把握する能力がある」、中国では「言い訳や、根拠のない自信を持たないことなど品位が低くないこと」、韓国では「仕事に自信があり問題解決能力を高く持っていること」
-上記、日中韓リーダーシップ調査により引用
またこの調査によると、リーダーが自分の仕事の満足度に与える影響度は一番高いのは韓国で、中国、日本の順となっている。日本では、誰がリーダーになっても自分の仕事のやりがいや満足度に与える影響は最も小さい、という事になる。
この結果から日本リーダー像と中国リーダー像を、私なりにあえて単純に比較すると、日本リーダーは「目標を明確に示して論理的に仕事を推進することにより部下を導く」、中国リーダーは「人徳により人間関係を築き部下を導く」ということではないかと考える。最近の若手の中国リーダーではオラオラ系の人も居たりするのではあるが・・・。
日中の文化・商習慣の比較
専門機関による調査結果を見てみたが、日本と中国の間にはやはり明確な差があるという結果が出ている。そこで、ここからは、超私見で日中間の文化・商習慣の差を上げてみたいと思う。なお、ほぼすべて北京で生活が長い私の経験に基づいたものであるので、南の方では違うなどの突っ込みがあればコメントにどうぞ。
日本 | 中国 | |
仕事観 | ・会社へ奉仕、地味な仕事をコツコツ ・プライベートより仕事を優先 ・金銭的報酬よりやりがい ・転職は少ない |
・自己成長重視する人が圧倒的多い ・平均的にワークライフバランス重視 ・金銭的報酬がやりがい ・転職でキャリアアップ |
会話 | ・相手を配慮し、控えめに発言 | ・自己主張、まず言ってみる(一方、通らなくて気にしない) |
人間関係 | ・相対的に単純、距離感がある ・ドライな関係 |
・物理的にも、心理的にも日本より近い ・ウェットな関係 |
意思決定 | ・ボトムアップが基本 ・担当者に言ってもなんとかなる ・意思決定は関係部門への根回しなど慎重 ・実行までは慎重だが、実行後は推進力あり |
・トップダウン式が圧倒的に多い ・上の人への直訴が大事、しかし担当者を無視すると実務推進上に問題が発生する ・年配は思慮深い人多い ・若手の経営層は即断即決のスピード重視(間違っていたら後で修正) |
人脈 | ・人脈より契約、ルール | ・契約、ルールより人脈 ・よってまず人脈構築から入るのが大事 |
お客様関係 | ・お客様は神様、できるだけ要望に応える ・お互いに「従業員」と「お客様」の立場をわきまえており、あくまでビジネスとしての付き合い |
・もちろんお客様大事だが、日本人ほど献身的ではない ・相対的に、踏み込んだ話を展開する必要がある |
チームワーク | ・定時後に懇親会が頻繁 ・週末でも同期で交流・交友有り ・プライベートで面倒なことを頼まない |
・仕事以外、十分な理由のない同僚付き合いは日本より断然少ない ・付き合いは日本ほどない割に、面倒な頼みごとは気軽にする |
残業 | ・残業しないのが珍しい ・一方、退社後、週末に仕事の連絡は少なく、対応できなくても咎められない |
・幹部、一部高収入業界を除いて、残業はそれほどしない(最近のIT業界はブラック職場だが) ・一方、オフの時間でも普通に仕事の連絡が来る。基本的に対応が必要 |
昇格 | ・年功序列の部分が多い ・昇格のために必死になるのが少ない |
・実力主義、年下上司が普通にいるる ・ベンチマーキング志向(他部署の同僚と能力・待遇を比較する) |
待遇格差 | ・一般社員と高級幹部の給与差は限定的 ・職種間の給与差はもっと小さい |
・社内階級が高くなると給与ぐんと上がる ・職種によって、同年齢でも給与が2~3倍異なる場合が頻繁にある |
飲酒 | ・強要しない | ・北京等中国北方では強要 |
ビジネス文書 | ・箇条書き ・分かりやすさを求める ・注意事項細かく書く |
・文書で書く ・日本と比べて抽象的 ・総論だけ、非網羅的 |
プレゼン | ・図やグラフを多用して分かりやすさと情報量重視 ・論理性とストーリー性を高度に求める |
・欧米式の箇条書き式 |
会社の競争力 | ・組織力、仕組み、考え方 | ・人間 |
考え方 | ・責任感と職責を果たすためには苦労をいとわない ・やりがいと承認を求める ・ルールを重視 |
・面子のためには苦労をいとわない ・金と名誉を求める ・自分中心に考える |
リーダーシップ | ・上司と部下はドライな関係。仕事の意義と、部下のやりがいを高めることが結果を出すためには必要 ・リーダーにはある程度の経験が求められる ・チームワークを重視し、個人プレーはチームワークを乱さない範囲でしか許容されない場合が多い ・自ら動けるプレイングマネージャー的なリーダーが多い |
・上司と部下は親と子供、師匠と弟子のようなウェットな関係。人間関係が確立されると、部下は高い能力発揮 ・若手で経験が無くても、管理職につける(やらなければ誰もできない) ・チームワークは自然には生まれない。チームワークを重視するリーダーシップの発揮(チーム目標の発信など)が不可欠 ・多少強引でも、牽引力と決断力のあるリーダーが求められる |
人の管理手法 | 自己管理の推奨、OJT | 競争制度、目標の明確化、奨励制度 |
歴史的文化背景 | ・島国で単一的、変化少ない ・血統主義、年功序列 |
・大陸で多様性、ダイナミックな変化あり ・能力主義(例:科挙の発達) |
もちろん、中国は日本の26倍という広大の国土をもち、多様な民族を抱えており、民族や地域によって文化が異なることは理解しているが、大雑把に日本と比較するとこのようになるのではないだろうか。
このような違いを理解していると、中国人の上司や部下ができたり、中国のビジネスパートナーと仕事をする際に大変役に立つと思う。
つづく
参考文献
陳舜臣(2016)『日本人と中国人』祥伝社.
孔健(平成28年)『日本人の発想、中国人の発想』幻冬舎.