ポイント
中国で面白い記事が出ていたので、今回は中国の出生率について考察してみたい。結論からいうと、北京や上海の出生率は日本の半分と我々の想像以上に低い実態が明らかになっている。中国では、このままいくと、2100年には漢民族がいなくなってしまう、などというツイッターがちょっと前に流行ったりもしたが、今回はその理由もみてみたい。
中国の省別出生率と東南アジア諸国との出生率比較
まず、中国を東南アジアと比べるとすでにやばいくらいに低くなっている。韓国の出生率が低いのは有名であるが、台湾が1.12、中国としては1.18ということで世界で3番目に出生率が低い、などと言われたりもします。
それに対して、少子高齢化がひどいといわれる日本の1.41がまだ高いレベルに見えてしまう。しかし、人口を維持するためには2.1必要なため、日本も低いレベルであることには変わりないのであるが。
省別にみると、北京や上海などの大都市が0.7台と驚くほど低い数字となっている。ライフスタイルの多様化や都会の生活コスト・育児コストが日本以上に高くそもそも子供を作りたがらない、などが原因と言われている。
また、遼寧省、吉林省、黒竜江省の東北3省は経済が停滞しており、若者が都会に出て行ってしまう、という理由があるようである。
出生率低下の理由
最大の理由は、長年、一人っ子政策を進めてきたことにより少子化が進んだことなのであるが、この間に「子供は一人」という概念が広まってしまったこと、また”望子成竜”など子供の出世を望んで非常に教育熱心ということもあり育児コストが非常に高い、特に都会では若者の考え方の欧米化が進みDINKSなライフスタイルが増えたこと、一人っ子世代が親になる世代となってきたがそもそも自分が人生を楽しむことに集中し子育てを望まない、など若者の価値観の多様化も大きな原因となっていると言われている。
また、男の子を望む文化的な背景により、一人っ子時代に男女バランスが崩れてしまい、 例えば80年代出世の人口となると、男女比率はなんと136対100となり、100人の女性に対し男性が136人もおり、約3400万人の結婚適齢期の男性が結婚できない、というような事態も発生している。
今後何が起こるか、すさましい高齢化と人口減少
世界銀行のデータによれば、中国の2018年時点の人口は13億8600万人であるが、29年に14億4000万人に達してから減少の一途をたどり、2065年には1990年代と同水準の12億人以下に落ち込むと予測されている。
また中国国家統計局によると、18年の65歳以上の高齢者は日本の総人口を上回る1億6658万人で全体の約12%を占めており、国連が「高齢社会」の基準値とする15%に近づいている。2050年には、この数字が26%となり、2018年の現在の日本と近いレベルまで跳ね上がってくる。
<内部リンク>
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中国の高齢化状況、2050年には現在の日本とほぼ同等の高齢化率へ
中国の高齢化が止まらない。ということで、今回は簡単に中国の高齢化状況について解説をしてみたいと思います。 中国の高齢者人口は他国とは全くレベルが異なり、65歳以上の人口が1 ...
高齢者が日本の人口を超える1.7億人という時点で想像を絶するのであるが、人口の4分の1が高齢者という世界に中国が突入した時、その経済がどうなるのか、だれも予想ができない。
よって、このような非常に悲観的な数字をもって、中国でも今すぐに出産制限から出産奨励に政策転換が必要だ、などと議論されています。現時点でも、2人目までは産めるが、3人目はまだ制限されている。もっとも、現時点では、制限がなくなったところで、だれも3人目なんて欲しがらないと思うが。
まとめ
上記で見てきたように、中国の出生率の低さと、そこからくる悲観的な未来により、中国では2100年には漢民族がいなくなってしまうなどという記事がツイッターなどで流れている。比較的多産な少数民族に比べて、漢民族の出生率が低いためである。中国人の間でも、結構な危機感でこの問題が語られている、ということである。
一人っ子政策は、他国が中国共産党を非難する時の大きな原因の一つであったのであるが、今後、多産っこ政策などを中国がはじめたら、それはそれでみんな非難することであろう(笑)