冒頭の挨拶
興奮し、同時に恐縮しています。これは私が人生で初めて受賞した企業マネジメントの賞であり、Xiaomiは創業後まだわずか9年の時間しか経っていない非常に若い新興企業であり、まさに経営能力を全面的に高める正念場に立っています。小米のマネジメントを更に高めるためには、専門家、学者、そして皆さんの指導が不可欠だと思っています。
Xiaomiは9年ほど前に、10人で1000万人民元の資本で起業しました。9年後の今日、フォーチュン世界500強企業の第468位にランクインし、史上最年少の500強企業となりました。この点は私自身も非常に素晴らしいと思っています。これは私一人によるものではなく、Xiaomiの経営陣全体と従業員、そしてすべてのユーザーと一緒に成し遂げた奇跡です。
9年前に私がXiaomiを創業したとき、私は初めて創業するような大学生ではありませんでした。その前に私は金山軟件(キングソフト)の創立に携わり、数千人規模の会社のマネジメントしていました。なので、Xiaomiを創業する時に、自らに一つだけ簡単な決め事をしました。それは、本当の起業家になることでした。
実はこの言葉は多くの意味を含んでいて、その中で最も重要なのは、創業したばかりの会社を過度にマネジメントしない、という事でした。一番気を配っているのは、いかにマネジメントを簡素化するか、さらには私自身でマネジメントをしないで済むようにするか、ということです。会社を設立した当初、私たちはマネジメントをやめて、KPIをやめて、肩書もやめてしまいました。どうしてこのようの考えになったのか?それは、この超高速の時代に、何が一番重要なのかをはっきりさせなければいけないと思ったからです。
①人を探すことはマネジメントの最初の切り口
もし共通の目標と共通の利益を設定できるような人たちを探すことができればマネジメントの問題はほぼ解決します。なので、私は人を探すことをマネジメントの最初の切り口にして、管理する必要のない人を探すようにしていました。
後で考えると、これらの人たちは3つの重要な特徴をもっていました。
第一の特徴は、まず有能で能力があることである。
第二の特徴は、高い責任感を持っているという事。何もインセンティブがなくても、責任感があればすべての行動がしっかりしているので、私たちは責任感に対して非常に高い要求をします。責任感は私たちに多くの手続きを簡素化させてくれます。
第三の特徴は、強い自走力があるという事です。この自走力は、共通のビジョンを理解し、一緒にどのようなことをしなければいけないかを理解しているかどうかです。それに加えて、私たちはインターネットを活用して、株とオプションを用いて内部で利益共同体を形成し、会社の大きな夢と、個人の利益を一致させる事が必要でした。
これは簡単に言ってしまえば、志や理想を同じくするということ事であり、優秀な人を集めて志を共にすることが必要です。だからXiaomiを起業した最初の年は、80%の時間を面接にあてていました。
三顧の礼という慣用句があるありますが、今日では、人材を求めるために30回訪ねてもやりすぎではありません。人材が見つからないのではなく、企業の努力が足りないのではないかとよく冗談を言います。スタートアップや目まぐるしく変化する企業の中で、良く人をマネジメントするためには、まず正しい人を見つけなければいけません。能力があって、高い責任感と高い自走力がある人を見つければ、あなたはマネジメントを緩めても、まったく問題はありません。
②単純で機械的なKPIは長期的な競争力を保証しない
マネジメントの過程で何故KPIが必要になるのか?ビジネスの本質はユーザに価値を提供することなのですが、これをKPIに単純化しようとすると、どうしても、正確な定量化の方向性を見出すのは難しいのです。
単純で機械的なKPI制度を取り入れると、過度な管理の泥沼に落ちやすいのです。
ソニーは私がかつてとても憧れていた会社で、若いころに研究を重ねて学んだ企業でしたが、その後、経営上の問題がたくさん出てきました。ソニーの場合、事業部とKPIという二つの概念にとらわれていることは間違いありません。
私自身は30年以上企業をマネジメントしてきましたが、最も重要な課題は業務ラインが長くなり、事業部が多くなったとき、CEOがどのように会社を管理するかです。報告書で管理したところで、報告書は長期的な競争力を意味しません。KPIをやめてしまった場合、どうやって何万人もの人々の力を引き出すのか?
創業したばかりのとき、我々は一つの重要なコンセプトを確立しました。ユーザを友達にして、友達のように交流するということです。これにはXiaomiは大いに力を入れています。
私たちは上場する前に、取締役会とすべての株主との度重なる交流とコミュニケーションを経て、Xiaomiは人々の心を感動させ、コストパフォーマンスの良い製品を作り続けることを決定しました。私たちは取締役会規定を作り、Xiaomiが経営するハードウエアの純利益率が永遠に絶対5%を超えないようにしています。もし5%を超えたら、私たちは利益を消費者に返します。
Xiaomiは、自らの利益率を法的な形で規定する数少ない企業かもしれません。多くの管理学では、利潤は高ければ高いほどいいと言われています。皆は、成長と利益の要求によって活動がどんどん変形し、多くの企業は一歩一歩後戻りできなくなっていきます。
我々の昨年のXiaomi全体での売上高は1749億人民元で、我々のハードウェア利益はちょうど1%程度しかないので、消費者がXiaomi製品を買う時、Xiaomiはそのような製品を作ってわずか1〜2%の利益しかあげないとコミットされています。このように続けてこそ、消費者の疑いのない信頼を得ることができるのです。
私が追い求めているのは何か?消費者がxiaomiの店でものを買う時に値段を見る必要がなく、品質を見る必要もなく、お金を払うだけで帰る事ができる、これが我々が追求しているビジネスモデルであり、このようなブランドを運営できるかを追求しているのです。
だからXiaomiの真のKPIとは、ユーザーの期待を超え、ユーザに口コミで宣伝してもらい、ユーザーにファンになってもらい、ユーザーに商品を友達に勧めてもらうことなのです。
この目的を達成するために、Xiaomiを創業した最初の5年間には、市場費用ゼロというさらに恐ろしい要求も定めました。Xiaomiが創業してからの5年は、私たちはほとんど広告を出したことも、PR会社を呼んだことも、広報記事を発信したこともありませんでした。雷軍はお金がなかったのではないかと多くの人が言うかもしれないが、実は2014年にXiaomiの評価額は過去最高の450億ドルに達しており、当時の売上高も1000億元に迫る規模でした。このようにすることで私たちは最も重要なことを検証したかっただけです。つまり、製品さえ良ければ、ユーザーの口コミで広がり、十分に多くのユーザーにリーチできるということを。
今年の国慶節休暇はヨーロッパにいましたが、スペインで多くのユーザーに会いました。私は、いつXiaomiを使い始めたのか聞いてみたところ、2010年と言っていました。その頃、我々はまだグローバルに販売をおこなっていませんでしたが、世界中の小米のファンがいろいろな言語に翻訳して、フォーラムやコミュニティ内で広げていました。そのため、Xiaomiが世界の各市場に進出する際、既に非常にしっかりとしたブランド基盤が出来上がっていたのです。
私たちのKPIはどのように事業を牽引するのか?それは、ユーザーの期待を超えて、ユーザーと友達になって、ユーザーの揺るぎない信頼を得ることによってです。これがXiaomiの最も需要なKPIです。これこそが二点目の要点で、KPIをなくしてしまう、ということです。
③比較的平等な経営の雰囲気を作る
3つ目は役職をなくしてしまうという事です。初期のXiaomiでは、私たちは先ほど話した基準で100人強の人を探しました。彼らは基本的に30歳前後で、かなり豊富な経験と、特に何か偉大なことをしたいという強い思いを持った人たちでした。このような人々を集めたのです。
我々が初期に提唱した、役職をなくすとはどういう意味か?私たちは基本的に彼らの役職をエンジニアと呼びます。もしディレクターを置いてしまうと、その人と大体同じぐらいの仕事ができる人がいれば、オフィスの中はディレクターだらけになってしまいます。エンジニアであれば、みんながエンジニアですから、かえって有能な人を多く受け入れることが出来ます。
そのため、初期のXiaomiでは意図的に階層を混乱させていました。Xiaomiでは長い間、階層はありませんでしたし、今日2万人あまりの企業となっても、シャオミーグループ全体でも副社長以上の管理者は13人か14人しかいません。このような比較的平等な雰囲気の中で、業務ユニットごとに非常に強い主体性を持たせ、初期に実験的に役職をなくしていた時でも素晴らしい成果をあげていました。
時々、私たちが個別に仕事の出来る優秀な同僚たちを管理職に抜擢しようとすると、彼らは必要ない、今のままの方がもっと良い、と言ったりします。このようなマネジメント風土をベースとして、創業して9年目になりました。
もちろん、いつでも、また昨年の上場の後も、われわれは公の企業として、どうすれば企業をよりスムーズかつ制御可能で安全にし、イノベーションと成長性を高めることができるのかを考えています。なぜならば、現在2万人余りの企業の中で、もし我々が9年前に作り上げたこのような考え方に固執すれば、いくつかは通用しますが、いくつかはすでに通用しなくなっているものもあります。全面的な改善が必要であり、そのためXiaomiは現在でも経営を全面的にアップグレードさせているのです。