今回は中国の紀元前からの人口と超長期GDP推移をご紹介したい。このような数字を日常生活で見ることはあまりないのであるが、改めて見てみると、日中関係や、世界の情勢について深く考える機会を与えてくれる。中国が急成長して世界の脅威になりつつある、というのは非常に偏った見方で、誤解を恐れずに言えば、中国は4000年以上の長きにわたり、戦乱の時期を除き、常に世界NO.1の国家であったという方が正しい。以下、詳細を見てみよう。
西暦1年からの中国のGDP
世界大学ランキングの100位にも入ったことがあるオランダの超有名大学であるフローニンゲン大学が発表した西暦1年以降の世界の国別のGDPシェアの推移を見てみたい。このようなデータがあるのが驚きであるが、いろいろと厳しい条件で調査したデータである。
中国とインドの両国は、ヨーロッパで産業革命がおこる19世紀まで、常に世界の3分の1程度のGDPシェアを持っていた経済大国であったことが分かる。
中国大陸が農業に適した土地であった事と、文化程度が常に世界で最高クラスで早期から貨幣経済が発達したことが背景にある。
逆に20世紀以降はアメリカとヨーロッパ諸国のGDPシェアが一気に跳ね上がる。日本は1980年頃をピークにシェアを落としつつある。
客観的な事実として、
- 中国の歴史的な定位置は世界NO.1の経済大国であり、近年、その過去の定位置に戻りつつある
- 1820年頃の清王朝最盛期の中国と1950年頃のアメリカのシェアを見るとほぼ同じであり、スーパーパワーと呼ばれた全盛期のアメリカの影響力が、過去の中国が持っていた影響力とほぼ同じである
という事になる。
この二つは、なかなか実感として理解しにくいかもしれないが、客観的な事実である。
中国政府はこの2点を良く理解した上で行動しているので、そのような視点で中国の政治や外交を見ると見え方が変わってくる。
紀元前22世紀の夏王朝以降の人口推移
次に人口の歴史推移をみていこう。最初に言っておくと、中国の歴史的人口推移は驚きの連続である!
ちなみに、中国は古くから文字が発展し、歴史を各王朝が正史として書き残す文化があったため、古くからの人口の推定が出来ると言われている。しかし、それでもいろいろな説があるので文献によって若干数字は異なるので注意が必要。
中国は王朝交代の混乱期に人口が驚くほど減少する。そのため、王朝が成立して社会が安定すると、為政者は安民と言って税金を下げるなどの民衆を安んじる施策をとり、その結果、人口が爆発的に増加するのである。
このグラフを見ると面白い点に気づく。現在の中国の領土の対部分を占める中原を大きく超える領土を誇った元と清を除くと、中国の人口は6000万人に近くなると大きく減少する傾向がある。
これは中原の農業生産力の限界が6000万人程度であったようで、この人口を大きく超えると、飢餓が発生するなどの社会不安に陥り、最悪の場合は王朝が滅亡してしまうからである。
上記のグラフでも人口が急減している三国時代の発端となった黄巾の乱、唐末期に起こった黄巣の乱などの農民反乱はこのような背景があったと言われている。
ちなみに、明→清の王朝交代期にも人口が大きく減少しているが、この時期は戦乱と異民族による征服という中で様々な虐殺が行われた。この詳細や、その他の主要な人口減少時期のランキング詳細については、過去の投稿記事を見ていただきたい。
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日本との人口の比較
日本の過去の人口推定は中国よりも難しい。過去の文献が残っておらず、6世紀以降くらいからしか正しい推定が出来ないとされている。
江戸時代初期までは緩やかに1000万人ほどまで増加して、天下太平の江戸幕府のもとで人口が大きく増えて3000万人くらいで安定したと言われている。中国のように急激に人口が減少する時期が無いのは面白い。
よく言われるように、日本は長期安定した社会であり、中国は戦乱の社会というのはあながち間違いではない。
これを中国と比べてみると、江戸時代までの日本は、中国最初の王朝である紀元前20世紀代の夏の人口にも及ばなかったという事になる。
まとめ
歴史を見ると、中国と日本の関係性の見え方がまったく異なる。現代に生きる我々は、日本がアメリカに次ぐ先進国で、経済・文化大国という本当に一時的な状況を当たり前と思い込んでいる。
しかし、それはここ100年程度の、長い歴史の中では本当に瞬間的な状況であり、中国が過去の繁栄を取り戻しつつある現在、過去の歴史にしっかりと向き合い、中国との関係を考えないといけないのである。
ちなみに、習近平政権が良く「中国夢」という言葉を使うが、一時的に落ちた中国の国力を、過去の定位置に戻す、という風に見ると非常に理解しやすいだろう。
別に、中国を恐れる必要はない。なぜなら、過去のスーパーパワーであった時代の中国は、元王朝の除いて日本を攻めたこともないし、むしろ両国は有効な交流を続けてきたという長い歴史があるからだ。日本はこれからはむしろ中国から学ぶ、という姿勢を持っていく事がとても重要だろう。