本屋で時間つぶしのため何気なく手に取った本であったが、三国志に精通した人でも楽しめる、為になる良書であり一読をぜひおすすめしたい。正史である三国志と、物語である三国演技の違いにもところどころで触れており、非常に興味深い内容となっている。
内容紹介
400年余り続いた漢帝国が滅び、魏・蜀・呉が天下を三分して覇を競う動乱の時代が訪れた中国。
「治世の能臣、乱世の姦雄」と評された稀代の傑物・曹操。
漢王室再興の大義を掲げ、蜀漢建国を果たした英傑・劉備。
曹・劉の間に立ち回り勢力を拡大する一代の英雄・孫権。
……正史として書かれた『三国志』をひもとき、小説『三国志演義』では描かれなかった群雄の真の姿を、三国志研究の第一人者がわかりやすく解説する。入門に最適な一冊!
(Amazonより)
著者紹介
1962年、東京都生まれ。早稲田大学理事、同大学文学学術院教授、三国志学会事務局長。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科修了。文学博士。
専門は中国古代史。 著書に『三国志 演義から正史、そして史実へ』『魏志倭人伝の謎を解く 三国志から見る邪馬台国』『漢帝国 400年の興亡』『始皇帝 中華統一の思想』など著書、監修書多数。
また、新潮文庫版の吉川英治『三国志』において、全巻の監修を担当した。
感想
まず、三国志マニアの私でも驚くほど、この著者は三国志とその時代背景についての造詣が深い。それもそのはずで、著者の経歴を見ると、三国志学会事務局長で、しかも吉川英治三国志の監修もされていたとのこと。その造詣の深さが文章のいろいろな所から滲み出てきます。
三国志の時代だけではなく、後の時代への影響や、より前の漢の時代などについてのエピソードをさらっとまじえて分かりやすい解説を書いている。例えば、曹操がどうして、皇帝になれなかったのか?この本によると、以下のように説明されています。
自らが擁立した皇帝を殺害することは、圧倒的な強さを持っていた項羽が、義帝を殺害したためにやがて劉邦に敗れたように、自滅を招くためです。そのため曹操は、自分の代には漢を滅ぼせなくなりました。
もちろんそのほかの様々な理由もあったのでしょうが、このように説明されるとなるほどと納得してしまいます。
また、曹操が始めた屯田性や戸調と言った田制・税制が唐まで受け継がれて、後の中国の基礎となったということで、劉備や孫権ではなく、曹操が作った魏という国の重要性を説いています。一方、劉備は三国演技で描かれるような聖人君子ではなく、正史を引き合いに出して、感情激しく軍事に優れていたとも説明しています。我々日本人が持っている曹操や劉備へのイメージとはちょっと異なる史実が非常に面白い。
本の章建ては人物別になっており、第1章劉備、第2章貂蝉、第3章曹操、、、、などと著名な人物が網羅されている。その他では、袁紹、関羽、張飛、趙雲、諸葛亮、司馬懿、周遊、荀彧、魯粛などなどと豊富な内容になっている。それぞれの人物紹介で「なるほど」と思うようなエピソードや史実が紹介されている。オシメンが居るなら必読でしょう!
内容自体は固いものではなく、平易にカジュアルな文体で書かれているので、隙間時間にさっと読めるので三国志マニアには是非一読をお勧めしたい。