中国で50~60年代に流行した連環画(子供向けの絵物語、中国式の漫画)から、三国志の関羽が神格化された物語「関聖帝君(原題:关圣帝君)」をご紹介。219年の樊城の戦いで、志半ばに倒れた関羽であるが、非業の死を遂げた人物には強い霊力が宿ると言われており(日本でも菅原道真とかの例があり)、関羽も死後長い時を経て商売の神としてあがめられるようになった。この連環画にはその過程が描かれており非常に興味深いので、関羽ファンは読んでみることをお勧めする。
(1)天上の霊霄殿には、玉皇大帝のそばに火徳星君という力強く格好良い大神が居た。この大神は玉皇大帝に忠誠を誓い、また同僚にも誠実で義侠心があり、天下の民衆に対しても非常に善良であった。
(2)ある日、玉皇大帝が下界から、河東郡の解良城一帯で、人々が長い間神を祭っていないという報告を受けた。玉皇大帝は怒り、すぐに火徳星君を派遣し、一晩のうちに下界の百万人の家を焼いてしまうように命令した。
(3)火徳星君はとても驚いた。神を敬わない人は少数で、百万の家はとても多かった。火徳星君は下界にやってきたが、思い悩み、良い方法が思いつかなかった。
(4)この時、河東郡の土地の菩薩がやってきて、彼に対して「玉皇大帝はお前に百万の家を焼くように命令したが、百と万という名前の人の家だけを焼いてしまえば良いではないか」と言った。火徳星君はこれを聞くと何度も頷いた。
(5)その日の夜、狂風と暴雨と雷があり、落雷があった。解良城には百という名前のお金持ちが1軒、また万という名前の有力者の家が1軒あったが、家は突然炎に包まれ、すぐに焼けて崩れた。
(6)百万人の家は守られ、玉帝大帝の命令も実行されたので、火徳星君はみんな喜ぶと真剣に思った。しかし、玉帝大帝も馬鹿ではなく、すぐに真実を知り、火徳星君が小細工をしたことにカンカンに怒った。
(7)玉皇大帝はすぐに「火徳星君は君主を欺いた罪により、明日の午後三刻に南天門外で斬首にする」と命令した。火徳星君は、執行人に斬仙台に押さえつけられ、時間になると斬首となった。
(8)河東群の土地菩薩はこの情報を聞くと、馬王廟和尚の夢に出て「明日、堂を綺麗にして、香を炊いてローソクをつけて、金の盆を準備しなさい。三刻に、神が降臨するはずだ」と告げた。
(9)和尚が目を覚ますと、すでに外は明るくなっており、急いで土地菩薩の言いつけ通りの準備を終えた。午後三刻まで待っていると、突然あたりが真っ暗になり、真っ赤な鮮血が天から降ってきて、金の盆の中に入っていった。これが農歴5月13日の事であった。
(10)玉皇大帝は火徳星君を切ったが、火徳星君の魂は鮮血と一緒に金の盆に入った。7日7夜後、和尚は金の盆の中の血がすべてなくなり、盆の中に一人の白くて太った男の子が座っているのを発見した。
(11)和尚は宿星が降臨したのだと思い、しっかり育てなければいけないと思ったが、自らは出家した身であり、不便が多かった。そのため、この男の子を解良城で豆腐を打っている馮夫婦に預けることにした。馮夫婦には子供が無く、喜んでこれを受け入れた。
(12)男の子はだんだん大きくなり、長生という名前を付けた。後に、私塾に数年通い、少し物がわかるようになると、父の母の帳簿管理を助けて、商売が出来るようになった。
(13)馮長生は商売以外にも、孔子の『春秋』を愛読し、古代の賢者に思いをはせた。彼はまた特に友達を作るのが好きで、刀やこん棒を振り回して、年齢は大きくなかったが、武技に習熟し群を抜いていた。
(14)ある日、馮長生が解良城で豆腐を売っていると、突然人馬がやってきた。代官の息子であった。彼は大きな馬に乗り、手に持った鞭で通行人を叩いていた。
(15)馮長生は避けきれず、この非行少年に馬の鞭でひどく打たれた。連れの家来たちは、わざと彼の豆腐の屋台を倒し、大笑いして大手を振って去っていた。
(16)非行少年たちはこのように人々を虐めていた。馮長生は怒り、追いかけて、彼を馬から引きずり下ろし、少し懲らしめると、泣き叫んで許しを求めた。周りの人たちはこれを見ると、非常に喜んで「殺してしまえ」「殺してしまえ」とはやし立てた。
(17)馮長生は怒って、拳を振り上げて彼の頭部を激しく殴ると、この非行少年は口と鼻から血を噴き、死んでしまった。家来たちは主人が殺されたのを見ると、逃げだして、役所に訴えた。
(18)代官は息子が殺されたと知ると、烈火のごとく怒り、兵を派遣してこれを捕まえようとした。彼は馮長生の似顔絵を描かせて、いろいろな所に張り付けて、通報するように言った。
(19)馮長生は、昼を避けて夜に行動し、飢えと寒さに耐えていた。この日の夕方、彼はとある観音廟にやって来たが、突然官兵がやってくるのを見つけた。彼らの手には馮長生の似顔絵があり、捜査をしていた。
(20)馮長生は声を上げる暇もなく、急いで廟の中に逃げた。彼は中を見渡したが、隠れる場所もなく、観音菩薩の像の後ろに跪いて、何度も「阿弥陀仏、阿弥陀仏」と唱えた。
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漫画でわかる中国語連環画『関聖帝君』02 日本語翻訳(関羽が神となる物語)
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