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日系企業の中国マーケティング戦略について考える

更新日:

中国で日系企業がマーケティング戦略を行う場合に気をつけるベきことをまとめてみたい。私の経験に基づくものではあるが、ある程度一般化して考えても良いのではないかと思う。

中国におけるB2C市場開発、営業活動における重要ポイント

 

B2Cにおいては市場環境が異なる点についての背景理解が大変重要になると考える。中国はまず日本の26倍の国土を持ち、地域別に文化、風習、民族も異なる。さらに言えば、収入レベルも沿岸部と内陸部、都市と農村で大きく異なる。日本は比較的小さい、閉ざされたマーケットであり、文化や収入レベルも全国であまり大きな差は無い。よって、日本企業が中国で市場開発、営業活動を行う場合、日本での成功体験や日本流のマーケティングはまったく役に立たないということを認識すべきである。


この場合、このような多様性を持つ市場に対する最も重要なポイントは、捨てる戦略である。市場をしっかりとセグメント化して、自社の強みはどこにあるのか、また逆に弱い部分は大胆に捨てることが必要となる。そもそも、戦略とは何をやって、同時に「何をやらないか」を決めることであり、特に日系企業が中国で市場開発をする際に大変重要であると考える。

 

中国の競争環境は日本以上に苛烈である。ちょっとホットな市場があると数千社が一気に参入し、1~2年で大半が倒産、もしくは撤退してしまう。しかし、これは悪い所ばかりではなく、生き残った数社の製品やサービスは競争で磨き上げられ、非常に素晴らしいものになるのである。

 

中国の苛烈な競争環境で磨き上げられた、中国に根差したライバル中国企業に対して、外資系企業がいかに戦うべきなのか、この戦略性が大変重要なのである。

 

私も昔、中国市場で中国企業と同様の低価格戦う戦略を進めたことがあり、最終的に同質化競争に陥り痛い目を見たことがあるので、日系企業として、品質やデザイン、ブランド力を活かし、中国企業と差別化し、市場を絞り込む、逆に絞り込んだ市場以外はやらないことの大切さを痛感している。

 

中国におけるB2B市場開発、営業活動における重要ポイント

 

次にB2Bにおける市場開発、営業開発において、日系企業が特に気をつけるべきところを、外部環境と内部環境に分けて考えてみたいと思う。外部環境において、日本と中国が異なるのは、やはり人脈社会であるという点である。もちろん、日本においても人脈は当然重要なのであるが、日本の場合は最終的に商売を決めるのは経済合理性であることが多い。

 

日本では極端な話、人脈を持っている人と、人脈を持っていない人の差は、情報入手時における優位性程度あって、最終的な受注決定時には、人脈はあまり効力を発揮しない。しかし、中国における人脈はすこし異なる。表面上は公正な入札案件でも、決定時には人脈が優先されることがある。もしくは、人脈が、入札の優位性に決定的な影響を与えるような基礎的条件を作り出すことがある。たとえば、仕様化の段階で、すでに他社が入り込めないような条件が前提となっているなどは良くある話である。

 

また内部環境を見ると、中国のB2B事業は人脈が大きなポイントになることが多いだけに、この人脈の見える化、引き継ぎ、そしてコンプライアンス管理が非常に重要になると考えている。人脈管理は中国流にいうと「関係管理」であり、これは日本企業が通常重要と考える営業プロセス管理やパイプライン管理よりも大切になることが多い。

 

人脈は結局、個人につくものであり、ある大手カスタマーとの人脈を特定の社員が握っており、その社員が辞職したら、急にカスタマーとの商売がなくなる、ということは良くあることである。それを防止するためには、常に人脈の見える化、また特定の人物が持つ強い人脈の共有化を推進することが必要である。私も数年前に、この問題に対して、大手カスタマーの人脈図の見える化と、経営層から部長、課長、担当までの顧客とのグループミーティング定期化に関するプロジェクトに取り組んだことがある。

 

日本と異なり、人脈をオープンにすることを嫌がる中国人幹部は多いのであるが、顧客との癒着によるコンプライアンス対策としても人脈の共有化を常に推進することは必要不可欠である。日本は性善説で社員を管理するが、中国では人脈が強い中国の風習がベースにあり、これがどうしても個人間の利益交換につながるケースがあるため、性悪説を意識した管理システムを持っておかないと、会社経営に対して大きなリスクとなることを意識しておくべきである。

 

まとめ

以上、B2B、B2Cの両面から重要なポイントを見てきたが、結論は国土や文化の違いをしっかりと認識し、日本や欧米で成功した手法をそのまま持ち込むようなことはせず、中国の習慣や会社文化に合わせた形にカスタマイズを行わなければ、成功は難しいということである。

 

特に中国に進出している日本企業は、日本市場やアジア市場で成功体験を持つ企業が多いが、そのような企業ほど中国市場では苦戦をしていることが多い。現地の風習をしっかり学習し、成功体験を捨てて、自社の強みをしっかりと見直して、中国にあった管理ポイントをしっかり構築することができれば、成功の確率は高くなると考える。

 

 



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